こんにちは!猫森うむ子(@umuco_digital )です。
芸術家岡本太郎の太陽の塔をテーマにしたドキュメンタリー映画。最高に良かったので感想や考察などをまとめました。
関根光才監督にリツイート&コメントをいただきました!
関根光才監督 @kosaisekine の
映画「太陽の塔」@Taiyonoto_movie レビューをアップ!
本気でよかった🐱⚡️
何を考え、これからどう生きるのか?
「見終わってからがスタート」そんな気分にさせられる映画です。https://t.co/ytiAefp2JN
アジアンドキュメンタリーズ@asiandocs_tokyoで視聴できます!— うむ子umuco🐱⚡️@図解ブロガー (@umuco_digital) July 28, 2020
少し長くなってしまったので、気になるところだけでもご覧ください!
基本情報
2018年制作/日本のドキュメンタリー映画 112分
監督:関根光才
撮影:上野千蔵
音楽:JEMAPUR
出演者:
織田梨沙
糸井重里
菅原小春
Chim↑Pom
ほか
このレビューで使用した画像は映画「太陽の塔」公式サイトおよび、映像内からからお借りしました。
「太陽の塔」概要
80年代に「芸術は爆発だ!」という言葉とともに脚光を浴びた芸術家岡本太郎。
今なお古びることのない彼の表現は、現代に生きる私たちに強烈な問いを打ち立てる。
太陽の塔はまさに、岡本太郎の哲学と生き様の結晶とも言える。
芸術、哲学、民族学の専門家、アーティスト、ダンサー、デザイナーなど岡本太郎に影響を受けた29名が語る、太陽の塔にから受け取ったメッセージとは。
「太陽の塔」感想
映像、音楽、コンセプト…すべてが美しい
この作品はドキュメンタリー映画ですが、岡本太郎の精神的なコンセプトを現代風にかっこよく伝えるイメージ映像(フィクション)が盛り込まれています。
オープニング映像が圧倒的に美しくて、「太陽の塔」がもっている生命力や存在感、メッセージ性がビジュアルに落とし込まれています。
太陽の塔が古代と未来を繋ぎながら、現代人が忘れている生命感を取り戻していくようなストーリー性と世界観が美しく表現されています。
世界観を際立たせている音楽もとても素晴らしく、映像全体から訴えかけてくるものがあり、生命力が漲るような感覚になりました。
シンボリックに描かれる縄文土器や、時間を超えて繋がる世界など、ここからスタートする「太陽の塔」をめぐる精神の旅に期待が膨らみます。
空気感を感じられる色、収録された環境音、光と影のコントラストなど、手触り感のある描写が実体感に近い感触を呼び起こすようで、すぐに映像に引き込まれてしまいました。
インタビュー映像のライティングや音もきれいで、すべての完成度が高く、終始見ていて心地よい作品でした。
もはや「太陽の塔」という作品にとどまらない問題提起
このドキュメンタリー映画は「太陽の塔」を主題に置きながらも、作品紹介にとどまらず日本のあらゆる問題に「このままでいいのか?」と問いかけています。
「太陽の塔」を掘り下げることで見えてくる岡本太郎の残したものは、社会の「違和感」に目を背けてきた現代人へのメッセージなのではないかと考えることができます。
アート、哲学、人類学、縄文、日本の起源、核や原発、マンダラなど、様々な角度から「太陽の塔」を掘り下げることで見えてくる、知識人としての岡本太郎の姿。
様々なジャンルの専門家が語った言葉を、パーツに分けて数珠つなぎのようにコラージュされているのが印象的で、監督のこだわりが感じられました。
「岡本太郎の思想」という文脈のなかで、複数の人物の言葉がひとつにまとまるというのは、それだけ普遍的なメッセージを残している証しなのだと思います。
すごく面白い表現だと思いつつも、編集がとんでもなく大変だったのだろうなと想像してしまいました。
太陽という象徴はなにを伝えようとしているのか?
映画の中でも語られる、岡本太郎に影響を与えたフランスの哲学者・思想家のジョルジュ・バタイユ。
バタイユの言葉に「消尽(しょうじん)」「純粋な贈与」というものがあります。
消尽とは非生産的な消費を意味します。
バタイユは、太陽は過剰なエネルギーを与え続けるものであり、見返りを求めず与え尽くす消費こそが生きる目的だと考えました。
古代民族の贈与の考え方や風習から影響を受けていたようです。
自然と共生しながら生きる古代民族のサステナブルな知性であり、人間の生きかたの本質が感じられます。
岡本太郎とジョルジュ・バタイユがフランス留学時代に民族学の講義を受けていたマルセル・モース。
彼の著書「贈与論」も必見です。
【レビュー&考察】贈与論とは?マルセルモースの名著をイラストでわかりやすく解説「芸術は爆発だ!」の言葉の背景には、芸術は「見返りのない生命力の贈与」であるべきだという哲学があったのだと思います。
この映画の終盤でも語られるように、「太陽の塔」は時代を超えて受け渡される贈与を意味していたのではないでしょうか。
日本の起源と岡本太郎
沖縄や東北で岡本太郎が見つけたもの
フランスから日本に帰国した岡本太郎は、自らのルーツを探るべく日本を旅して回ります。
狩猟社会のもつ「瞬間に生きる」という暮らし方や、そこから生まれた文化に感銘を受けます。
人は目的を持つことで未来に縛られますが、無目的的に一瞬一瞬に命を燃やす狩猟民族の生きかたにこそ人間の美しさや素晴らしさを感じていました。
沖縄や東北などを旅し、人々の暮らしを見て、生きかたそのものに表現の根本を見出していきました。
岡本太郎と縄文
岡本太郎は「縄文土器論」のなかでこう語っていたそうです。
「人間が人間になった瞬間から、世界を認識する力は変わらない。科学が進歩すれば世界のことが良くわかるというのは幻想。」
「子供だから、原始人だからといって、世界に対する認識が劣っているわけではない。」
岡本太郎は縄文土器に日本で初めて美術的な美しさを見出した人物でもあります。
アートをやる以上、この世界に起きているすべてのことを理解しなければならないと語っていた岡本太郎。
民族学を通じて暮らしに根ざした表現を目の当たりにしながら、芸術のあり方を見直していたように感じます。
「非常なアシンメトリー」「不協和なバランス」「ハンターの空間センス」という表現で縄文土器を語っていました。
自然と共生する縄文人のつくる有機的で動きのある造形に魅了されていたのだと思います。
縄文と岡本太郎についてはこちらのドキュメンタリーもおすすめです。
【レビュー】「縄文にハマる人々」生と死、自然と共生するサステナブルな縄文の世界まとめ
とにかく中身が濃すぎるのに、最後まで集中して見続けられる内容で、アートファンだけでなく現代を生きるすべての人におすすめの作品です。
見終わってからがスタート。そんな気分にさせられる映画です。
太陽の塔や岡本太郎が投げかけた問いに対して、どう答えていくのか?
生きることとどう向き合うのか、一人ひとりが改めて考える必要があるのだと直面させられます。
岡本太郎が太陽の塔に込めたメッセージや監督が投げかけたテーマによって、わたしたちが何となく感じていた社会への違和感や窮屈さの正体が明らかになる。
そして、その制限から脱するためにどう生きるのか…そんなインタラクティブな対話そのものだと感じました。
受動的に見るのはもったいない!前のめりに見てほしい作品です。
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